2020年度からセンター試験が廃止され、大学入学共通テストが実施されます。英語の試験は民間試験に代替される予定ですが、先日TOEICが大学入学共通テスト撤退を決めました。
TOEICは国内の英語試験の中で受験者数が英検に次ぐ2番目の規模(年間約120万人)です。TOEICを利用して受験対策を進める現場の先生、生徒からは困惑の声が上がっています。
目次
民間試験導入の背景
民間試験の導入の背景には、「高大接続改革」があります。高校と大学の教育を通して、世界で活躍できる人材を育成する、そのために教育内容や入試のあり方を変える改革です。
英語における新しい観点は、「読む」「書く」「聞く」「話す」の4技能を測ることが挙げられます。かつてのセンター試験ではこの4技能を計測できない、グローバル人材を育成できないという反省点から、この4技能を計測できる民間試験の導入が決まりました。
この英語の民間試験は、一発勝負の試験ではありません。現在の高校2年生が高校3年生になるまでの2020年4~12月に2回まで受験することができ、その成績結果を大学側に提供します。
現場の不安
ある公立高校の教諭はこう話しています。
TOEICに標準を合わせてカリキュラムや指導内容を計画してきたのだが、撤退となった今、非常に困惑している。各民間試験は「英語試験」という観点では皆同じだが、それぞれ対策が若干異なる。以前はセンター試験のみだったので対策は1月までに間に合わせればよかったが、今回のように変更があると対策しきれない。
学校の先生たちは、生徒の進路実現のために、受験を突破するために指導計画を立てています。英語の民間試験の時期を視野に入れて計画を立てています。それが不透明だと、非常に不安になります。
また、生徒たちも不安です。
部活動や課外活動を高校3年生まで続けますが、英語の試験に対応できるか不安です。先輩たちはセンター試験までに間に合えばよかったのですが、僕たちは高校2年生のうちに準備を終えてなければなりません。試験の種類や内容、期間が変更されたり無くなったりすると、どのように学校生活を送ればいいか迷ってしまいます。
このような声が大きいことから、7月25日に全国校長協会が動きました。文部科学省に対して、要望書を提出して計画性の明確化、不安の解消を求めました。
TOEIC 大学入学共通テスト撤退へ 運営複雑理由に 受験生に影響 (毎日新聞)
今後の文部科学省の対応はまだ分かっていません。もしかしたら他の民間試験も撤退となるのでは?などの声も出ています。
現場の対応
まだ不透明な新入試に対応するためには、生徒が早めに進路や志望大学を決定させる対策がなされています。大学ごとに試験科目、形式(面接、小論文、グループディスカッション)は様々ですが、2020年度の入試方針を早めに表明している大学は多いので、志望校に標準を合わせた対策を早期に取っています。
北海道大、東北大、京都工芸繊維大などの国立大学は、英語の民間試験の活用をしないことを決めています。理由は、各試験の内容が異なり公平性に問題があることです。
しかし、早期な対策といっても、高校1年生のうちからなりたい職業や志望校を決めさせるには少し無理があります。通常は、高校生活を送る中で自分の適性や志向を見極め、情報を収集して時間をかけて進路を決定していきます。
入試に合わせた高校生活を送るのではなく、時間をかけて自分の進路やキャリアを考えられる仕組みになってほしいところです。
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