先生
教育現場にITが導入され、破壊的イノベーションが起きています。
それを少し前から予言していた人がいます。
ハーバード・ビジネススクールのクレイトン・クリステンセン教授です。
彼は、2008年の著書『教育×破壊的イノベーション』の中で、ITの進化によって教育市場の破壊的イノベーションが起きると予言しました。
現在、日本の教育市場では進化したITの導入によって破壊的イノベーションが起きています。
クリステンセンの予言が的中しています。
この本に感銘した阿部
目次
破壊的イノベーションとは?
クリステンセンによると、破壊的イノベーションとは「既存の企業や現在の顧客が必要としていないイノベーション」です。
既存のリーダー企業が失敗をするのは、意思決定を誤るからではありません。
リーダー企業は、現在の顧客の声に耳を傾け、現在の顧客が望む製品やサービスを提供することに注力するため、失敗してしまうのです。
破壊的イノベーションによる製品やサービスは、すでにマジョリティー層にいるユーザーではなく、少数のイノベーターユーザーに評価されることで市場に参入することができます。
IT好きの阿部
破壊的イノベーションによるリーダー企業の交代の流れ
1. 既存の大企業は、既存の中心ニーズのユーザーの要求に応え、収益性の高い持続的イノベーションを追求する。
2. 低性能だった破壊的イノベーションによる製品は、当初こそローエンドな市場ニーズにしか応えられなかったが、少しずつ改良され、既存市場の中心ニーズも満たすようになっていく。
3. 持続的イノベーションによる製品性能が過剰性能(過剰解決)になってしまい、一方では破壊的イノベーションの製品でハイエンドの消費者が満足できるようになると、一気にリーダー企業の交代が起きる。
IT好きの阿部
2種類の破壊的イノベーション
クリステンセンによると、破壊的イノベーションには2種類あるという。
一つは、既存市場の「低価格・低機能」の市場から出発する「ローエンド型破壊」。先ほどのリーダー企業の交代はこのローエンド型破壊によって起こる。
もう一つは、消費者がいない市場から出発する「新市場型破壊」。
技術革新によって新しい価値を生み出し、今までにない市場を作り出すことによって起こる。
IT好きの阿部
教育業界における破壊的イノベーション
現在、教育業界にもITの進化によって破壊的イノベーションが起きています。
教育における持続的イノベーションとは、従来型の「一斉授業」方式を用いるイノベーションです。
一斉授業の形態は崩さずに、新たなITツールを従来の形態を補完するツールとして導入されます。
今までの文化、形式、教師を少しだけエンパワーする改革です。現在でも大手のリーダー企業がこのような持続的イノベーションを進めています。
元教員の阿部
一方、教育における破壊的イノベーションというのは、「学びの個別化」を実現することです。
動画コンテンツやAI教材を用いて、個々に学習を実現するアダプティブラーニングがこれに当たります。
そこでは従来の一斉授業は行われません。
ITを用いた学びの個別化は、最初のうちこそ既存の教育ニーズを満たさないものでした。
例えば動画コンテンツも自由な時間・場所での閲覧に制約がありました。
一般家庭が手を付けられないほど高価でした。
しかし、それは次第に解消されていきました。
また、動画コンテンツはいわゆる「見て終わり」で学習内容が確実に定着しない課題がありましたが、それを補完するような「学習メンター」「学習管理」のようなITサービスも出現しています。
そして徐々に市場の中心ニーズを満たすようになると、リーダー企業の交代(ローエンド型破壊)が起こるようになりました。
教育の中心である「公教育」の外側で起きる
このイノベーションは学校よりも塾の業界で顕著に起こっています。
集団指導が主流でありましたが、やがて個別指導・自立学習の形態が台頭しています。
授業はあまり行わず(もしくは全くやらない)、生徒がITを用いて学習します。
生徒のレベルにあった動画コンテンツで学習することができます。
「一斉授業」を一切行わないからこそ実現できたイノベーションです。
現在では「学びの個別化」に市場トレンドが大きくシフトしています。
このようなイノベーションは、教育の中心である学校の外側で起こります。
塾であったり、教員不足の顕著な農村部の学校、通信制の学校、就学前教育などのかつては「無消費」だった市場で起こります。
教育における破壊的イノベーションは、教育の中心である学校からは起こりにくいです。
カリキュラムや制度を0から作り出すのではなく、上乗せする形で改革がなされています。
日本のカリキュラムは教科の縛りが強いことが特徴です。
これが制度レベルのマクロなジレンマです。
故に抜本的に、根本的に改革することは困難です。
また、ITによっての破壊的イノベーションは、教員の仕事をいくつかリプレイスします。
教える業務も動画コンテンツやAI教材がリプレイスします。
しかし、教員は教えたくて教員になった人が多いです。
生徒に直に教えたいんです。
これが現場レベルのミクロなジレンマです。
教育業界における破壊的イノベーションは、
- 完全に「学びの個別化」へのシフト
- 無消費な領域へのIT利用
によって今後も加速していきます。
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