11月1日に大学入学共通テストの英語民間試験の実施延期が決まりましたが、新たに導入予定の記述式問題の中止も求められています。
先生
・記述式はなぜ中止を求められているの?
・記述式ってどんな問題?
・中止になったらどうなる?
記述式問題を具体的に解説し、中止が求められる背景と今後について解説していきます。
目次
記述式の中止が求められる背景
中止が求めれる理由は大きく分けて2つあります。
- 採点体制の問題点
- 受験生の自己採点が困難
1. 採点体制の問題点
記述式問題の採点は民間企業のベネッセグループが行います。50万人の回答を採点するために、多くの大学生を雇って採点されようとしています。
記述式問題の採点は簡単ではありません。採点の基準と観点が複数あり、採点者の主観を入れないように気をつけなければなりません。その採点を専門家でない大学生に任せて大丈夫か?という懸念の声が上がっています。
2. 受験生の自己採点が困難
2次試験の出願先を選ぶ際の目安になるのが自己採点。現在のセンター試験はマーク式なので、マークミスをしていなければ自己採点の点数と実際の点数との差はほとんどありません。
しかし、記述式問題でははっきりとした点数が出ないため、2次試験に出願する受験生にとってはかなりの不安要素。第一志望校への出願を断念してしまうかもしれません。
記述式問題の内容
記述式になるのは国語と数学。マーク式では測れない受験生の思考力や表現力を問う問題の出題です。実際にどんな問題が出題されるのか、2017年の試行調査問題を見てみましょう。
国語
国語の試験の中で、以下の解答手順の記述式問題があります。
- 資料と課題文を読ませる
- そこから必要な情報を抜き取る
- 80~120字で記述させる
【設問の一部を抜粋】
【解答例】
一見すると思考力や表現力を問う記述式の問題のように思えますが、資料や文章から必要な情報やキーワードを誘導形式で抜き出せるようになっており、思考力や表現力を問う問題ではないと懸念されています。
数学
記述式の設問だけ抜粋しました。理由を説明する問題です。
【中略】
【解答】
この問題の正当率は2%、無解答率49.8%でした。受験生にとっていかに難しかったかが分かります。
この結果を受けて、翌年2018年の試行調査問題では無解答率を下げるために簡易な記述式になりました。
【解答】
無解答率は17.3%まで下がりましたが、正答率は5.8%に留まっています。
2017年の問題よりも記述量が大幅に減っており、当初予定していた「記述式問題」の出題目的からは外れているような気がします。
記述式にする目的は、
- 身近な課題の解決に数学を活用すること
- 問題解決に向けた構想や見通しを立てること
などが目指されていましたが、試行調査の結果があまりにも悪かったので、ほぼマーク式に近い問題になりそうです。
記述式問題が中止になったらマーク式の試験に
記述式問題が中止になると、試験の形式はどうなるのでしょうか?
記述式試験中止法案
立憲民主党は「記述式試験中止法案」(大学入学共通テストでの記述式試験の導入を中止することとする議員立法)を提出する方針でいます。この法案は、大学入学共通テストを「マークシート式試験」として実施するものです。つまり、従来のセンター試験と変わらない試験形式になってしまいます。
現行のセンター試験の継続を
記述式問題がなくなるかはまだ分かりません。仮に、試験の形式がマーク式になってしまうなら、わざわざ現行のセンター試験をなくす必要はありません。現行のセンター試験 + 個別試験(二次試験)の形式を維持するべきです。
現行のセンター試験の問題は洗練されています。受験生の基礎学力をほぼ採点ミスなしで測ることができます。応用学力は大学ごとの個別試験(二次試験)で計測できます。大学はそれぞれの学生像(アドミッション・ポリシー)をもとに試験問題を作成し、学生を選抜すればいいのです。
右往左往せずに早く決着を
英語民間試験の実施が延期になっただけでも、受験生にとってはかなりのストレスです。受験生は英語の各試験の対策勉強を行ってきていたのです。
記述式問題の行方もまだ分かりません。大学入学共通テストについての議論はまだまだ続きそうですが、受験生のことを考慮して早めに決着がついて欲しいものです。
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