なぜ学力テスト結果で教員評価をしてはいけないのか?大阪市の方針に対する賛否

学力テストの結果を校長や教員の評価に反映させることについて賛否があります。

なぜなら、学力は単に教員の指導力だけで決まるものではなく、様々な環境に関する要因が含まれているからです。

また、「学力」の捉え方も変わってきています。

 

大阪市の方針

 

昨年、大阪市は小6と中3が受ける全国学力調査(学力テスト)の結果が政令指定都市の中で最下位でした。

この結果を受けて大阪市の吉村洋文市長は、昨年8月に校長や教員の評価やボーナスの額に反映させる意向を示しました。

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もともと大阪府は様々なデータにおいて全国最下位レベルです。

例えば、大学入試センター試験の現役志願率(平成28年)でも全国46位の結果です。

 

先生や生徒、保護者の進学意識が低い!ちゃんとしろ!

という精神論だけでは片付けられません。背景には家庭環境、経済格差の要因があります。

 

吉村市長の方針は、教員に喝を入れるような意図があるようですが、ことはそう単純ではありません。

学力形成には様々な要因が関わっているのです。

 

 

学力は多くの要因から形成される

 

なぜ学力が低いのか?

この現象をもっと多面的に捉える必要があります。

  • 非正規雇用率
  • 離婚率
  • 相対的貧困率
  • 母子家庭率

これらの指標で大阪市は全国ワーストに近い位置にいます。

大阪市の学力格差の要因は家庭環境、経済格差なのです。

 

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そこで大阪市は塾代助成事業の制度を導入し、学力格差の是正を試みています。

【塾代助成事業】

  • 市内に居住している中学生
  • 一定額以下の世帯所得(中学生の約半数が対象)
  • 月額1万円が上限

しかし、上限月額1万円の助成では十分ではありません。

なぜなら塾に通うのは月に2-3万円はかかるからです。

学力向上を、教育面だけで解決しようとするのがナンセンスです。

家庭や社会の歪みの結果が学力テストの結果に表れているだけです。

 

それなのに教員の評価に反映させていては教員はやる気をなくします。

教員を辞めます。

採用倍率が低下します。

そして大阪市の教育の質は低下します。

 

まさに負のスパイラルです。

社会全体の課題を、教員だけに押し付けるのは止めましょう。

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現在の「学力」を上げることに躍起になる必要はあるか?

 

この議論に上がっている学力は、ペーパーテストで測れて点数化できる認知能力(いわゆる「見える学力」)です。

現在の教育改革では、この認知能力に加えて非認知能力の育成(いわゆる「見えない学力」)が求められています。

高大接続改革とは?求められる学力の3要素

 

文科省が以前から強調している思考力、判断力、表現力に加えて、

クリエイティブな発想やプレゼンテーション能力の育成が求められています。

 

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教員も、これらの非認知能力をどのように育成するかを日々研究と実践を重ねています。

このようなパラダイムシフトが起きている中、この大阪市の議論は時代遅れすぎて落胆してしまいます。

 

社会の課題が学力テストに表れているだけです。

社会全体で教育を考え、教育論議それ自身も次のフェーズに移りたいものです。

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