神戸市立東須磨小学校で横行していた「教員間暴力」。生徒のいじめをなくすことが求められる教員の間で、なぜこのようなことが起こってしまったのか、原因や背景を探ります。
目次
「教員間暴力」問題とは?
神戸市須磨区の市立東須磨小学校で、30~40代の教員4人が20代の男性教員に対して嫌がらせや暴言などのいじめ行為を繰り返していた「教員間暴力」問題。
昨年9月に被害男性教員が激辛カレーを無理やり食べさせられた動画が広まったことで世に認知された。加害行為をした教員は男性3人と女性1人で、様々な嫌がらせ行為をしてきたそうです。
- LINEで別の女性にわいせつなメッセージを無理やり送らせる
- プロレス技をかける
- 「ボケ」「カス」などの暴言を浴びせる
もはやいじめではなく、犯罪です。
被害を受けた男性教員は、体調を崩して休職しています。そして10月11日に兵庫県警に暴行容疑で被害届を提出したそうです。
市教育委員会は加害側の4人について懲戒処分を検討しているが、県警は被害届を受理する方向とみられるため、刑事事件になることが濃厚です。
教員間暴力の原因は「神戸方式」?
神戸方式とは、校長の意向が強く人事に反映されるシステムです。教員の異動は、現行の配属先と異動先の校長が調整して素案を作成した後に、市教委が追認するシステムで、1960年代に始まったとされています。文部科学省はこのシステムを認知していません。
校長は優秀な人材や自分の言うことを聞く教員を自分のそばに置いておくことができます。人間関係が長期化して、ベタベタの関係になる恐れがあります。
加害教員4人はこの神戸方式の人事だったとされています。昨年12月に被害教員が前校長に相談しようとしたところ、前校長には「お世話になっているやろ」「いじめじゃないよな」などと取り合ってもらえなかったといいます。この人事制度と事件の因果関係ははっきりしてはいませんが、この古い人事制度が人間関係を悪い意味で固定化する側面は否めないでしょう。
顕在化しない教員の訴え
このような教員間の問題は、顕在化されていなものがいくつもあると思われます。訴えにくい教員の本音を聞きました。
何かを訴えてしまったら、他の学校にも知れ渡り、人事にも影響してしまう。
顔見知りがほとんどの学校という狭いコミュニティでは、何かあっても訴えにくい。
部活動の強い先生は、それだけで希望の学校に異動できる。
全ては管理職に気に入られるかどうか。
現職の先生から聞くのはどれもリアルな職場事情。管理職に嫌われないように職務をこなしていくことは窮屈なはず。本業の教育活動に集中することは難しいでしょう。
最後は法的措置を取らざるを得ない
管理職に相談しても取り合ってもらえない場合は、法的措置を取らざるを得ません。
埼玉県の小学校教諭(59)は、時間外労働に残業代が支払われていないのは違法だとして、県に約242万円の未払い賃金の支払いを求めて訴訟を起こしました。
このような労働トラブルに直面する教員が増えてきています。
最近では、労働トラブルの一般事件を補償対象とした弁護士費用保険に加入する先生も出てきているほどです。労働組合での加入ではありません。個人で加入する先生が出てきている状況です。
本来は、教員は本業である教育活動に邁進することが本望です。しかし、このような人事制度のもと、歪んた人間関係にある職場に身を置く教員は、様々な身を守る手段を知っておかなくてはなりません。
子どもたちにいい教育を届けるためにも、古くてナンセンスな人事制度や労働環境を改善したいところです。
[…] 「教員間暴力」問題はなぜ起こってしまったのか? […]